森に住んでいるオオカミが、あるとき人間のお父さんがベンチに座って、女の子に本を読み聞かせているのを見つけました。そっと近づいたオオカミは、夢中で聞き入ります。やがてお父さんと女の子は帰っていきますが、その途中で本を道に落としたまま、気づかずにいってしまいました。オオカミは大喜びでその本を拾ったものの、字が読めないのでなにが書いてあるのかわかりません。フクロウやウサギやイノシシに読んでと頼んでも、「食べられてはたいへん」と、みんな逃げてしまいます。そんなとき、小さなウサギが「ぜったいにわたしを食べないなら」という約束で、その本をオオカミに読んであげるのです。読み終わったあと、「おしまい」と言って本を閉じようとしても、オオカミは「もういっかい! もういっかい!」と、おはなしに夢中。つぎの日も、動物仲間たちが止めるのもきかず、ウサギはオオカミに本を読んであげました。オオカミはまたしても「もういっかい、もういっかい!」とねだり、「おねがいだから、おれに読み方を教えて」と頼みます。読み方を教えたら、きっと自分は食べられてしまう、というウサギの心配も無用でした。オオカミは森のどうぶつたちに、すてきなおはなしを読んで聞かせるようになったのです。
お話の楽しさを、ダイナミックで表情豊かなドゥリュリーの挿画が、大きくふくらませています。(きむひろ)
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ベネディクト・カルボネリ/作
ほむらひろし/訳
ミカエル・ドゥリュリュー/絵
クレヨンハウス刊行
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