透き通るような青空の下に白壁の家が並ぶ、スペイン・アンダルシア地方のモゲールの町。詩人ヒメネス(1881年~1958年。1956年に74歳でノーベル文学賞受賞)は、この町で生まれ育ち、マドリードの大学に学びましたが肺をわずらい、故郷にもどって静養生活を送りました。その時期に、田園にかこまれたなかで瞑想と作品づくりに没頭。月のような銀色をした、毛並みのやわらかいロバ、プラテーロに語りかけながらすごした日々を、100を超える短い文章で描いたのが、この本です。「(プラテーロは)手綱を放してやると草原へ行き、バラ色、空色、黄金色の小さな花々に鼻面をかすかにふれて、生暖かい息をそっと吹きかける」「わたしといっしょにおいで。おまえに、花や星のことを教えてあげよう。花や星はのろまな子どもを笑ったりしないから、おまえのことも笑いはしない」そんなふうに、プラテーロに語りかける形で書かれています。全編を通じて、思わず微笑んでしまう温かさと明るさと、詩のような美しさにあふれています。ふんだんに添えられた長新太さんの挿画も、本当に素敵です。(きむひろ)
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ファン・ラモン・ヒメネス作
伊藤武好・百合子訳 挿画:長新太
理論社刊
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