この本は上皇后美智子さまが、国際児童図書評議会世界大会でおこなった「橋をかける――子ども時代の思い出」と題する基調講演の中で、ご自分が読んだ体験をお話しになったため、広く知られるようになりましたが、そのような背景を抜きにしても、子どもにも大人にも心に残る作品と言えるでしょう。かみやしんさんの挿画も、ほんとうにのびやかで、透きとおるような美しさにあふれています。
この一冊の中には、でんでんむしのお話のほかに、“春ってどんなもの?”と知りたがる鹿の坊やが、野原に咲く花や遠くから聞こえる鐘の音で、春を感じとっていく「里の春、山の春」と「木の祭り」も、収められています。(きむひろ)
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新美南吉/作
かみやしん/絵
大日本図書刊行
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