「ぼくは どこにでもいる ふつうのこ」と、男の子が窓辺でつぶやいています。
自分には、すごいところがひとつもないと、よろいみたいな体をしたサイをうらやましく思うのです。でも、本当にそうでしょうか。「とんでもない」と、サイ自身が言います。「よろいがおもくて、歩きまわるのがたいへん。うさぎは身軽でいいな」と。でもうさぎ自身は、自分は身軽なため、飛び跳ねた拍子に池に落ちたと話し、「大きな体でゆったり海を泳ぐくじらがいい」とうらやむのです。でも、当のくじらは「とんでもない。きりんみたいに陸の上でいろんなものを見下ろしたい」と答えます。すると煙突から首をだしたきりんは、首が長いためどれほど苦労するか嘆き、空を飛べる鳥をうらやみます。そう言われた鳥のほうは「地面に降りると、猫などに襲われるので仕方なく飛んでいるだけ。強いライオンだったらいいのに」と、応じます。ライオンは自分たちが狩りでどれほど苦労するかを語り、「人間の子どもみたいに本でも読んでいたい」とこぼすのです。そして最後に人間の「ぼく」が、人間の子どもである自分たちの大変さを、この絵本を読む人たちに訴えます。つまり誰もがみんな、それぞれに「たいへん」なのです。
ユーモアたっぷりな絵と文で、ひとのことは良く見えるけれど、苦労しているのは自分だけではないと伝える絵本。絵も構成も魅力的なこの本は、ようちえん絵本大賞のほか、絵本屋さん大賞(4位)、リブロ絵本大賞(入賞)なども受賞しています。(きむひろ)
-----
鈴木のりたけ 文/絵
アリス館
表紙の絵からユーモラス。他の動物たちがどんな顔で「とんでもない」と言うのか…覗いてみたくなりました。読んでみたいです!