「こすずめのぼうけん」や「ぐるんぱのようちえん」など数多くの絵本の挿画を手がけた堀内誠一さんが、絵本についてまとめた「ぼくの絵本美術館」という本があります。そのなかで堀内さんは、このエッツの絵本と出会ったときのことを、つぎのように書いています。「それは絵本の展示会でした。何百冊と並んだ色とりどりの絵本の洪水のなかで、一冊の表紙がじっとこちらを見つめていたのです。それは色もわずかで線も弱い絵なのですが、子どもが大勢のなかから友だちや同年配の子を見つけるように、私はこの本に惹かれたのです。むしろ、とらえられたと言っていいでしょう。これは絵本のジョコンダ(モナリザ)です」。
金色の髪に大きな白いリボンをつけた女の子。その名前も、この本には書かれていません。表紙に描かれたその顔はどこか不安げですが、目はまっすぐにこちらを見つめています。
その女の子がある朝、野原へ遊びに出かけました。野原で女の子は、ばった、かえる、かめ、りす、かけす、うさぎ、へびに出会いますが、声をかけてもみんなどこかへいってしまいます。ところが! 女の子が音をたてずにじっとしていると、ばったもかえるも、うさぎもへびも、みーんなそばによってきました。やがて、しかのあかちゃんが近づいてきて、女の子のほっぺたをなめます。「ああ、わたしはいま、とってもうれしいの」という女の子の笑顔で、ものがたりは終わるのです。(きむひろ)
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マリー・ホール・エッツ 文/絵
よだ・じゅんいち/訳
福音館書店刊
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