小学校高学年の読み聞かせに使いました。それぞれの捉え方で、六年間の読み聞かせで心に残った1冊として挙げてくれた子が多かった絵本です。
第二次世界大戦を舞台に、ぬいぐるみの目線で書かれた絵本。戦争の悲しさを感じさせる淡々とした絵本ですが、久しぶりに読み返すともう一つ大きなテーマを見つけました。
オットーが長い年月を経て出会った人たちにある共通点ーユダヤ人、戦争孤児、黒人、ストリートギャング、ホームレス。時代を超えて今もいる社会的差別を受ける人たちを、ストーリーの中に配置しています。人はみんな平等に尊いモノであるはずなのに、多様性を認めない思想から差別が生まれ、争いの火種になる。オットーも高級なドイツ製テディベアなのに、容姿が変われば「いらないモノ」となる。ボロボロのテディベアになっても、自伝を書ける特別なテディベアであることは何も変わっていません。そんなオットーの価値に気づくのは、虐げられた側の人たちだったりもします。
それぞれの人の違いの中に、たくさんの良さがあるのだというメッセージ。読めば読むほど何かが見つかる。ひとひねりある、トミー・ウンゲラーの絵本らしい深い一冊だと思います。(N.K)
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トミー・ウンゲラー 作
鏡哲生 訳
評論社
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